「シキミが咲いた」
モクレン科の常緑小高木の花。
四月ごろ香りのよい花を咲かせる。
実が密につくため「樒」の字をあてた。
◆渓を登る
渓を渡った山道は
カヤハゲの山麓を登り返す。
シキミは有毒で鹿も嫌うし
生命力も強いんだろうなぁ。
◆まほらに入る
渓が削り落とした急登は
住処を追われた鹿たちにより
下草を食べられ土壌を失った。
足下に気をつけ登ると
南に白髪山が姿を現す。
「新緑はまだや」
北斜面やきねぇ。
◆森の中のもう一つの森
長笹谷から急登を終えた
山道はヌル谷入りなだらかになる。
この先には私たちが35年かよう
奥物部の森のまほらがある。
「伏流したね」
前回音を立てて流れていた
沢は大地の下に潜っていた。
保水する土壌がないきね。
「今年もバイケイソウも
すくすく伸びゆうね」
今年も
清楚な花が楽しみだ。
◆腰を下ろす
土石流や伐採などで森を失うと
毒草や毒茸がはえる事は観察され
また野苺やタラなどトゲを持つ
植物が覆うことも私達は見てきた。
それは「入ってはならない」
と言う自然の営みの一つであって
森は人の手を借りずとも時をかけて
調和が取れた森に回復するのだろう。
「トチも沢胡桃も
葉を出して気持ちえいね」
そうやね 一息ついたら
お母さんに会いに行こうか。
人の世に咲きて樒の花かすか 高木石子