猿板

遊山黒子衆SARUの記録

啓蟄に入る加持ヶ峰遊山 寒の禽

                                             

 「転ばぬ先の杖」

 切り立つ行場の岩を登るため
滑り止めの道具を履くことにした。

 溶けた雪が凍った処もありそうだ。

◆攀じ登ること
 「大丈夫そう」は危険の知らせ。
登山は臆病という装備を背負うこと。
それが最も大切な事だと思っている。

 ホールドもしっかり確保で。

◆大岩の頭
 真名井の滝頭には
日本庭園の様な河原があり
四季折々美しい風景を見せ
この日は水墨画の風景だった。

                                                 

 「休んで行くろう」

 危険箇所の通過は力が入り
筋肉痙攣も遭難だと思っている。

 暖かいお茶飲んで筋肉解そうか。

◆清水出流処
 大岩の頭の一つで装備を外し
私がこの森のまほらと思っている
大岩が堰き止めた渓の河原へ下った。

 「ミソサザイ?コガラ?」

                       

 大岩の河原に降りて
再び囀りたちに囲まれた。

 エントロピーが低いから
     気持ちいいのだろう。

 ここは川が生まれ出流ところ。
主稜線を成す巨大な岩の上にある
真に清い水が湧くこの場所に先人は
高天原を見たのではないだろうか。

 さあ 帰ろうか。

◆かえり道
 138億年前ビッグバンで
誕生した宇宙にあるものは
生物も物質も全て膨張して
薄れて劣化する宿命がある。

                 

 エントロピー増大の法則とは
「無秩序な状態の度合い(=乱雑さ)」を
定量的に表す概念で無秩序なほど高い値
秩序が保たれているほど低い値をとる。

「新鮮な魚」や「山の水」が美味しいのは
エントロピーが低いほど気持ちよく感じる為で
逆に時間が経ったり人が加工などするほど
エントロピーは高くなって気持ちよく感じない。

     

人はエントロピーを増やして生活するから
自然材で家を建て室内はすっきり整理し
新鮮な物を食べたり時々海や山に行って
エントロピーを下げながら生きた方がいい。

 「気持ちいい遊山やったね」

 無駄なものは一つもなく調和して
短い命でも繫がって常に更新している。
海や山に行くことはいい趣味だと思うよ。

                             

 帰りに道の駅でお昼にした。

私は猪肉丼tochikoは山菜立川そば。

 この産直素朴な料理も
エントロピーを下げるだろうね。

                  寒禽の声のこぼるる摩崖仏  皆川盤水