猿板

遊山黒子衆SARUの記録

冬はじまる奥物部の遊山 冬空

                                         

 四方を鋭く切り落とした
標高約1700mの白髪山の頂は
なだらかな笹原で迎えてくれる。
林道が出来る前からそうだろう。

◆空に出ること
 この四国山地南の前衛峰は
荒れると風雪が強く叩きつけ
晩冬に入ると南斜面が故に
積雪によっては雪崩の巣となる。

◆稜線の雪のこと

 「15cm位かなぁ」

 四方から風が吹き上がる
稜線の雪は山麓の倍と考えて
装備を整えていいと思う。

                                         

今日はスパッツ持って上がったけど
次は下から履くだけの雪が欲しいな。

 さあ 帰ろうか。

◆山を観ること
 奥物部の峰々を一望出来るが
この時は白い雲が覆い隠していた。
でも35年この山域を歩いているから
北にいる峰々の積雪は大体想像出来る。

                             

 強い寒波を誇張する報道が多いが
12月の奥物部の雪はこの様なもので
その年の寒暖による足し算と引き算で
選べる山が奥物部には幾つかある。

◆かえり道

 「冬山のはじまりやね」

 そうやな。
今年なりの冬を見定める
山道がまたはじまるな。

 「霧氷?」

 木々への着雪とも思うけど
どちらも水だから同じだろう。

 綺麗ならどっちでもいいよな。

                       

人間社会の価値観は人それぞれ
「利己」でも成してきたけど
自然に生きる命は「利他」でないと
生きてゆけなかったのではないか。

◆より道
 今日は日本に降りる強い寒気を
静かに待つ風景に出会うことが出来た。
でもそれも35年繰り返してきたが
どの年も同じであった記憶はない。

                 

 林道にも静かに雪が降っていた。
さあ今年はどんな冬になるのか。
おっかなびっくりドキドキしながら
また山に分け入ろうかね。

 「この冷やいに
    山に入っちょたが?」

 新しい雪が綺麗やったで。

    頂きます。

                   雲詰めて冬空といふ隙間あり  山西雅子