「流石に静かですね」
標高1400m見ノ越登山口で
TommyさんとY'sと落ち合った。
気温は9度で今頃なら暖かい方だ。
◆登り口のこと
「少し山歩きしてから行きます」
私達はそんなY'sを見送って
登山リフト駅センターに開店した
クラフトビール醸造所に立ち寄った。
「お久しぶりです!」
オーナーは山小屋の長男で
ビールは剣山の水で造られる。
「母からtochikoさんに」
今回は会えない三代目の奥さんは
手作りの酢カブで迎えてくれた。
ホットサンドも美味いよ!
次第に寂しくなってきた
登り口に新たな発想は
とても嬉しいことだ。
僕はおかわりもらうから!
◆分け入る
日本の山岳信仰で
最古とも言われる剣山の山道は
劔神社に上がる石段から始まる。
古代信仰の神は高き山にあるとされ
国生みの原点である淡路島から見て
最も高い山である剣山は霊峰として
神話の頃から認識されていたと伝わる。
西方に女神様の三嶺が見える。
曇ってはいるが雨はまだ先だろうな。
◆ブナの森
不浄のものの侵入を禁ずる
注連縄を潜り信仰の森に分け入る。
「Tommyさんとは
何年になるかねぇ?」
山道は橅の森からはじまる。
5年くらいかな?
「いやぁ もっとですわ」
山麓の森はすっかり落葉し
草木は冬の眠りに入っていた。
「風景は変わらんにね」
今では親戚以上の
付き合いになった
Tommyさんとの縁は
この山から始まった。
◆まわり道
今日も急な登りの近道に入らず
山懐深く緩やかに登る回り道入った。
これも山泊の楽しみ方の一つだろう。
「そこが えぇんですわ」
「もう暑いです」
手を洗えば身体が冷やされる。
祖谷川源流は枯れることはない。
ゆっくり標高を上げる山道は
橅の森を抜け亜寒帯岳樺の森に入る。
山懐を西南に巻く山道から
剣山弟峰の次郎笈が見え始めた。
「一本しょうや」
「ヤマガラやね」
山の雀も丸くなって休んでいた。
ここで冬を越すんだなぁ。
神の山仏の山も眠りけり 福田蓼汀