猿板

遊山黒子衆SARUの記録

霜降に入る奥物部の森 秋晴

                             

 登り口から観る雲の流れは早い。
今回の台風22号は日本本土への
上陸はまずないと言ってよいが
遮るもののない高山は注意を要する。

◆雲と風のこと

 「風が強いろうね」

北の寒気に押され流れが早い
雲の中から西熊山が姿を現した。

 雲頭が毛羽立ってるな。

 登り口の気温は11℃。
山登りの基本は「汗対策」で
今日は中厚のアンダーウエアに
風を防ぐ薄い防風着を羽織った。

                             

 さて 行こうか。

30年超えてかよう
林道に分け入った。

◆花のこと
 人が自然を排した林道には
森では生きられない花が咲くが
土石流や山火事跡も同じことで
人が感じる善し悪しとは違うもの。

                             

「人字草は10月まで」

 「山紫陽花は枯れても冬まで残る」

この鳥や風が運んだ種の生死は
その地その時の環境が決めること。

 

 「えい風やね」

風は鳥も命も運び森を養う。

 気持ちいい日和やな。

                       

◆樹のこと
 林道の高木が紅葉を始めた。
この錦に移ろう色合いを美しく感じる
日本人は色彩より色合いなんだろうな。

 私たちが通い始めた頃の林道は
出来たばかりで木は少なく背も低かった。
一時環境破壊と言われた大規模林道建設も
30年足らずで木や草が根を張り呑み込まれる。

                 

 「夏は暑かったね」

木が伸び夏は木陰で涼しく
秋には紅葉を魅せてくれる。

 今はこの林道が一番だな。

 人の大脳で観て感じる環境は
巨大で膨大な力を持つ地球にすれば
一瞬の出来事なんだろうと思う。

                                     

◆森のこと
 林道は尾根を巻き視野が開ける。
ここは渓に向かい急峻に切れ落ちて
木が育ちづらく対岸の森がよく見える。

 「稜線は終わっちゅうね」

標高1500mから上は散って
これから1200m位が見頃かな。

                       

 そんな古の峠道に沿う山道は
錦織りなす奥物部の森に分け入る。

                  秋晴の何処かに杖を忘れけり  松本たかし