猿板

遊山黒子衆SARUの記録

処暑に入る三辻独り遊山 はな筏

                                                                   

 ハナイカダが実を落とした。

山地に自生するミズキ科の落葉低木。
葉の上面中央の小花を乗せた筏に見立てる。
初秋に球形黒色の果実を結ぶ。若葉は食用。

国有林に入る
 山道は杉檜の植林から始まり
この山域が隆起したことを示す
大きな転石が所々に座っている。

1.9億年前湧き出した太平洋プレートが
北上したフィリピン海プレートに激突し
ユーラシアプレートに沈み込み生まれた
日本列島は中心に背骨の様な高山が連なる。

                 

その最前線の一つである土佐は
海から近距離で2000mに届いた
急峻な四国山地が東西に横たわる。

 伐採されて改めて見えるもの。

照葉樹林に入る
 三辻山北斜面の植林を横切る山道は
南国らしい椎や椿の常緑広葉樹林に入る
土佐の夏は雨が多く冬は晴れた日が多い
複雑な地形があり植生は寒暖広範囲だ。

山道には年中厚く落ち葉が敷かれ
ドングリも沢山落としてくれるため
多様な生物が棲む生態系を成した。

                             

 勿論それには人も入っている。

◆杣道に入る
 山道の谷側に積まれた石積が
この道の長い時を示してくれて
南斜面に点在する平地には
人の暮らしがあったかもしれない。

 四国山地の南に位置する土佐は
雨に恵まれた山岳地帯が多く良材を産し
山地の層も厚かったため漂泊民と言われた
木地師が長く滞在する里が点在していた。

           

 山道はかつて茶屋があった
樫山峠に至る峠道から別れて
北斜面にある自然の森に向かう。

                     花筏一粒神の忘れもの  高橋良子