「涼しいねぇ」
この時雨は止んでいたが
森の樹々から滴が落ちていて
古い東屋の下で一休みした。
◆屋根の下
雫も霧も肌で気化して
運動による放熱を冷まし発汗も
抑えるから給水が少なくて済むが
炎天下の稜線ではそうはいかない。
◆森の下
三辻山が東に下ろす尾根の
北面に生きる自然林へ分け入った。
森の樹々は高木から林床まで
幾つかの層を成して雨粒を止め
幹を伝って根元に流れたりするため
全てが直接大地に落ちる事はない。
特に空に向かって枝を広げる
広葉樹などの樹形は漏斗となって
水が流れる幹は地衣類やコケが覆う。
山毛欅には雨が似合うよなぁ。
◆母の元
木が根から吸い上げた水を
葉で蒸発させる時気化熱が奪われ
天気がよいほど気温が下がるため
森の気温を一定に保つとも言える。
その木陰は紫外線からも生き物を護り
稜線より森の方が植生は豊かになる。
祖先が広葉樹を柞(ははそ)と呼んだのは
森を恵みと見続け至った真理なのだろう。
「これは警戒の鳴き方」
ケキョッ ケキョッと鶯が鳴く。
やっぱり森を成す命たちは
互いに助け合っていると思うなぁ。
万緑や狐狸の山浅く 鈴木真砂女