猿板

遊山黒子衆SARUの記録

夏終る三辻山の遊山 俄雨

                             

 昭和42年自然休養林に指定され
広場として整備された杖塚に上がる。
このサツキなど植えられた植栽も
次第に自然の草木に吞まれつつある。

◆雲を観る
 空の雲はまだ明るく
南から足早に流れていた。

 風が強くなった
     先を急ごうか。

◆峠に下る
 古の峠に下る杣道に入り
急に大粒の雨が降り出した。
しかし雲は明るく薄いようで
先回の様な雷の心配はなさそうだ。

                             

山と山の間の鞍部となる峠では
一定方向に流れる雲もぶつかって
収束帯となり雨が降ることがある。

特に複雑な地形を持った山岳は
雲と地形を観てルートや装備を選び
荒天に対処することが大切だと思う。

 さっきの風は変化の風か。

   

◆近道に入る
 峠から入る三辻山への近道は
稜線の北側をほぼ直登する道で
さっきのにわか雨は止んでいた。

「やっぱり鞍部の雨」

 すっかり雨は上がり
薄暗い人工林の林床には
雨雲が透かす薄日が差した。

                           

 山は来て空を見て
入って雲と風を読み解く。
それは楽しいことでもあり
安全登山には大切なことだろう。

◆稜に乗る
 山道は急登を終えて
三辻山が東西に張る稜に上がる。

                             

「ここも降っちゅうね」

 雲がぶつかる稜線も
雨が降りやすいところ。

 稜線を歩く山道の先に
忘れられた昭和の園地が見えてきた。

                       さむしろや蝶も巻き込む俄雨  几董