この山の特徴でもある
落差20mの滝を成す大岩の
右岸を巻いて滝頭に上がる。
◆滝頭のこと
「この風景がえいよね」
滝頭の上にはこの大岩が
沢を堰き止め出来た釜がある。
ここの四季はいいよ。
◆渓のこと
山道は吉野川の支流
佐賀山谷川に沿い源流に向かい
大木が護る自然林に囲まれる。
「沢風は気持ちえいね」
涼しく沢音を運ぶ風が吹く。
たとえば街や稜線の風が強くても
森は若葉を吹けば風は優しくなる。
水は海まで流れ風は流れを溯る。
その草木が少ない渓に沿って
マタギや杣も山に分け入った。
その循環の源は太陽の力。
◆若葉のこと
標高約900mの登り口から
約1400mの山頂に至る山道は
木々の芽吹きを溯り登る。
姿の見えない鳥の囀りは
渓のものから森のコガラに変わる。
スズメ目シジュウカラ科の鳥。
やや小形で高山帯の林に繁殖する。
「繁ると解らんねぇ」
虫が若葉を求めて登ったろうし
コガラたちは忙しく小さいから
今頃は囀りが本質でえいろうね。
◆栃のこと
「散りゆうで!」
足下に落ちたばかりの栃の花。
この山でtochikoが追う開花に
今年も間に合ったようだ。
山道は栃の老木が根を張る
信仰の境域に入る石段を登る。
「花序ごと落としちゅう」
裏と表年がない栃は
今年も沢山花を付けたようだ。
鬱蒼とした森の中から
定福寺奥の院遍照院が現れる。
一本立てろうか。
山雀とあそぶさみしさこのみけり 徳永山冬子