「お待たせしました。
どうぞお入り下さい」
通う山の遊山のあとは
馴染みの洋食屋さんを訪れた。
◆通うこと
もう3年になるだろうか。
閉店する馴染みの店の板長に
紹介されてから毎月通う洋食屋も
私達の大切な遊山の一つになった。
◆夢を持つこと
「私だけが実現できた」と言う
子供の頃から夢だった街の洋食屋は
開店間もなく今も続く騒動に直面した。
いつも一段落したシェフの目配せで
表で二人していろいろ話をする。
「頑張ってよかったよ」
少しずつお客さんが帰って来たと言う。
◆人はパンのみにて生くるものにあらず
「今の若い人は手抜きをするから
こんな爺さんも頑張らないかんと思うた」
そのとおりだと思うよ。
このお店がシェフのゴールじゃなよ。
私は仕事柄、農業や漁業など
補償金の類いが継いできた文化を
駄目にしたことを多く見てきた。
一方で「辛いこと」「頑張ったこと」が
困窮した人生の肥やしになったことも見てきて
本来自然相手とは恵みも災いも受け入れて
その群で助け合い生きていくものだとも思う。
「銭金じゃないね」
そんなシェフの優しいフレンチは
私達の人生の肥やしだと気づいた夕餐だった。
シェフ ご馳走様でした。
麗しき春の七曜またはじまる 山口誓子