雪の危険を避け尾根筋を追う冬道。
彼女は無雪期に何度かこの道を登って
この日初めて道の見定めをしてもらった。
◆ルート ファインディング(route finding)
登山での道筋をさぐること。
tochikoが後から彼女を見守り登る。
「そこから左に折れて!」
その日その時の雪の乗り方で
無雪の道が危険になる事があり
ホワイトアウトで視野が奪われ
地形すら解らなくなる事もある。
昨今のGPSを使うのも否定しないが
低温下での電圧低下などに不安があり
やはり経験で感覚を研ぐ事が大切だろう。
◆尾根のこと
この日先の雨で支持層が出来
スノーシューの刃が効き安定し
無事に尾根に乗ることが出来た。
その大岩の影で一本しょうや。
風が強くなってきた。
尾根は気圧差で風が吹き上がり
雪と共に吹雪となり時に視野も奪う。
尾根の雪は深い処で腰に迫った。
「スノーシューが
無い頃は大変やったね」
「な~んも見えんね」
深雪と突風に遊ばれながら
いつもの伐採跡に辿り着いた。
さあ 引き返そうか。
自らの技量とその日の空を見て
決して無理な行動をしないこと。
それが雪山の基本だと思う。
◆引き返すこと
「今年はヤバいっす!」
私達に先行してこの山域主稜線に
2泊3日で入った峰から報告があった。
種ごとの「危険」は遺伝子に継がれ
それがない種は淘汰されてきたのだろう。
でも遺伝記憶を押さえる大脳が発達した
人間は危険を克服する道具などを作り
道具を駆使して危険と感じなくなったが
多くの超人と言われた登山家が山に散った。
登山における
本当の危険とは何だろう?
◆かえり道
尾根に上がる風が強くなり
昼は山麓に降りてまほらで摂った。
「雪の粒が大きくなった」
渓を吹き上がる風は正直だ。
爆弾低気圧になったようだな。
「来たぁ~!!」
突風の間隔も短くなった。
「早く降りて
正解やったね」
上空の雲の動きも早くなり
尾根から雪煙が吹き上がる。
そら!
また来たぞ!!
ここなら吹雪も楽しいものだ。
お地蔵さま。
自然は人の想いと関係ない処を
流れているのですよね。
南山麓にある山里は
晴天に向いて梅が咲いていた。
今年の花冷えはどうだろうね。
山里や井戸の端なる梅の花 鬼貫