「ここはみんな
来るのが遅いもね」
ウチからも1時間足らずの登り口は
今日も私達だけの登りはじめだった。
◆分け入る
多少風がある気温は1度。
風対策に薄いシェルを羽織って
昭和の頃の採石場に上がる
古い林道を歩きはじめた。
◆春の兆し
「草が生えだしたろか」
枯れた風景に埋もれるような
柔らかい若葉が目に付いた。
三椏も膨らみゆうろか?
「まだ越冬芽のままと思うで」
寒さが極まり春が兆す。
そんな立春が近づいてきた。
◆植林
林道を別れ工石山登山道に入る。
ここから人が植えた杉檜の林となる。
自然の種は分布を広げる事が目的で
稲や家畜も人に寄生して分布を広げ
私は杉や檜も同じだと考えてる。
「去年の花が残っちゅうね」
人が自然を拓いた里近くに
棲む野草や外来種も同じだろう。
◆二次林
昼間も薄暗い植林を抜けて
山道は若い木々の二次林に入る。
ここは自然公園として自然を廃して
人の想いで様々な植物が植えられた。
けれど鳥や風が運んだ種も根を張りはじめ
この環境に適応できない樹木の淘汰がすすみ
やがて層位毎生育に適した植物のみが定着して
また長期的に安定した極相林を形成するのだろう。
野鳥の群の囀りが下りて来た。
南斜面で風が穏やかこの場所を
鳥たちは解っているのだろう。
「杖塚寄るろう」
いささかな草も枯れけり石の間 召波