滝の下流部にある佐賀山集落の一軒の家に
ある夜美しい娘が一夜の宿を請い家の主人は快諾した。
娘は「私が休んだら体に水を掛けて下さい」と願った。
◆滝の大蛇伝説
不審に思った主人は娘が就寝した頃
座敷を覗くと大蛇がとぐろを巻いていた。
翌朝娘は宿の礼を述べて立ち去った。
主人はどこの大蛇かとそっと跡をつけていった。
すると龍王の滝まで来ると滝壺に静かに身を沈めた。
その後主人は大病を患い寝たきりになったという。
= 大豊町史記による =
◆渓を溯る
落差20mの滝を成す大岩の
右岸を急登で巻き滝頭にあがる。
「わぁ~ 綺麗っ!」
滝の上は幾つかの段が続き
森の風景は白色に一変した。
ここから山道は頂上付近より出流
吉野川支流の南小川水系佐賀山川谷を溯る。
◆自然との絡合
梶ヶ森北面の森は樹々が若い。
この森の道を外してよく観れば
炭焼竈や小屋跡の石積みなどあり
古より木材利用していたことが解る。
その自然を敬う炭焼や薪取りは
大木が程よい間隔で残されて
中低木が高木の下に枝葉を広げ
多種多様な命を養う森にした。
「綺麗ですね!」
それは自然の恵みを得るだけでなく
霧氷が着いても美しい風景を見せる。
◆信仰の域
再び山道は勾配を増し
真っ直ぐ延びる石段を登る。
「ここは山麓にある
定福寺の奥の院」
この平坦地はその境内となり
先は古から聖域とされる場所。
「あの軒下借りて
休んでいくよ」
八方に音捨ててゐる冬の滝 飯田龍太