猿板

遊山黒子衆SARUの記録

晩秋に入る剣山遊山 山法師

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 「山法師がどっさり成っちゅう」

山野に自生するミズキ科の落葉高木。
六~七月に小枝の先に白い花びらに見える
苞(ほう)に囲まれた頭状花序をつける。

◆最古の霊峰
神の山に相応しい木の実が成る
標高1950mの山頂へ登る山道は
劔神社の石段から始まる。

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 不浄のものの侵入を禁ずる
注連縄を潜り信仰の森に分け入る。

 ここらは これからやな。

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◆神の域へ
 私が「信仰」と呼ぶのは
太古日本に発生した民族信仰は
祖先や自然神への尊崇が始まりで
その遙か後の「宗教」とは違う。

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自然をじ~と見続けてきた日本の祖先は
何が善で何が悪かを体験的に理解しており
教祖・経典・ 教団で成り立つ宗教による
善と悪との区別を要した他国の民とは違う。

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クリスマスやハロウィンを祝いながら
初詣は神社に行く日本人の宗教観は
善悪弁えた外来宗教に対する寛容さで
宗教の違いによる戦争などもなかった。

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◆山懐に帰る
 山道は葉色は薄まり陽を透かし始め
冬の眠りに入る柞の森からはじまる。

祖先が名付けた「柞(ははそ)」とは
落葉樹の総称を「母」にかけた言葉。

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伐採を続け煉瓦で家を作った他国と違い
森は命を生み育むことを知っていた。
そして「もののあわれ」は再生への期待。
命は森で巡ることも解っていたのだろう。

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そして再びその命の絡合の中に
子孫たちは科学を持って分け入り
帰って行こうとしている様に思う。

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◆川出流ところ

 「休んで行くろう」

高い山は雲を集め川を生む。
特に剣山は石灰が故高く残り
地下水脈が多く流れている。

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雲となった水を山が地に落とし
草木が受け止め静かに地下に返し
地下でまとまった流れとなり海に還る。

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 「冷たくて
    気持ちがいいね」

 剣山の湧き水は格別だなぁ。

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                      雲中にして道岐れ山法師  木内彰志