いつもの登り口は
流れの早い雲の下にあった。
いつもの様に私達だけの登り口の
気温22℃は風が吹き抜け涼しく感じる。
◆分け入る
久しぶりの大型ザックに
皆で持ち寄る一泊装備を詰めて
肩に架かる荷も楽しいものだ。
歩き始めた2㎞余りの林道は
人の手が入ったが故根を下ろした
草花が秋の姿で私達を迎えてくれた。
◆水が造るもの
「やっぱり ここやね」
白髪山の山腹を削った林道は
幾つかの谷筋を横断するため
大雨の度土砂が道に流れ落ちる。
「これが自然でねぇ」
永く隆起と崩壊を繰り返し
雨が日本の国土を造ってくれた。
濃尾平野も木曽川などの
土石流が造った豊かな大地。
先人は災害と共に生きてきた。
◆きつねの嫁入り
冬に氷瀑となる流れも
瑞々しい緑に囲まれて美しく
雨上がりの林道に流れでた渓水を
ピチャピチャ歩くのも気持ちがいい。
「雨が降ってきた?」
対岸の森には霧雨が
筋となって流れていた。
さお担ぎやね。
樹々が覆った林道では
ときどき頬に落ちる程度で
傘を差すほどではない。
樹々の隙間をすり抜けた
霧雨と共に陽も射してきた。
きつねの嫁入りやね。
秋の雨しづかに午前をはりけり 日野草城