ゴロゴロ八丁の果て
両脇の岩壁が迫るところに
弥勒堂を祀る大岩の門がある。
◆権現さま
権現とは仏・菩薩が衆生を救うため
種々の姿をとって権(かり)に現れること。
石英が多く高く残った梶ヶ森の尾根に聳える
この巨石に先人は権現を見たかもしれない。
◆還るところ
険しく足場の悪い谷を登り
この大岩の門に辿り着くと
深い記憶に底にあるような
何か不思議な安心感を覚える。
生物の目的の一つは分布を広げることで
主に視覚で世界に広がった人間は確実な道標
特徴的な山や岩を記憶したことは想像出来る。
特に大地の隆起が活発な日本では
巨大な岩が大地に聳えることは珍しくなく
アフリカを発ち約3万年前日本に辿り着いた
祖先の信仰は山と岩から始まったと言われる。
◆顧みるもの
切り立ち暗い空間を作る
大岩の門を抜けると稜線に上がる。
「横顔に見える」
来た道を振り返り見る
天に聳え立つ岩の大きさに
改めて畏敬の念を覚えた。
これも遺伝子に刻まれた
記憶なのだろうと思う。
◆稜に出る
ゴロゴロ八丁を終え
山頂に続く尾根道に出る。
今日も山頂はいいよな。
「アサガラが実をつけた」
エゴノキ科の落葉高木。
西日本の山地に自生する。
果実は倒卵形で油を採る。
陽が尾根を越え木洩れ日が射す
樹々は実を結び落葉をはじめた森。
台風が過ぎたら彼岸に入る。
台風一過は涼しくなるかもな。
秋風に押されて入る阿弥陀堂 村本治美