自然の森は次第に勾配を増し
山道は真っ直ぐな古い石段に入る。
この山は古の修験の場であった。
◆信仰の域
定福寺奥の院が現れる。
梶ヶ森山麓にある定福寺は
山深い四国の中央部の豊永郷に
724年創建と記録されている。
今では山に吞まれそうな
かつての修験者などの宿坊で
私たちはいつも休憩している。
◆渓を溯る
奥ノ院を後に山の核心に向かう。
石段の先は道が幾つかに分かれて
私達は渓に沿って登る山道に入った。
さらに険しくなる山道は
落葉樹の大木の合間を縫い
流れと相俟って安心感を覚える。
複雑な地形の谷間は植生が豊富で
草花の夏は実り秋が咲きはじめ
季節も棲み分けている様に見える。
◆雨上がり
石英が多いが故高く聳える。
最後の登りは大岩の間を通る
正に這い上がる急勾配となる。
「ばんば(クワガタ)や!」
お前もあの大雨を耐えたんだなぁ。
水を得た秋菌も傘を開いた。
大雨だって恵みだよな。
◆真名井の滝
岩清水の源流を目指し
大岩重なる斜面を這い上がる。
この地形を成す巨大な岩の
細く曲がった約12mの滝が現れる。
いいなぁ
正に深山幽谷の趣だ。
芍薬のうつらうつらと増えてゆく 阿部完市