猿板

遊山黒子衆SARUの記録

十三夜の奥物部遊山 山滴る

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 さて 行こうか。

私は気持ちよいところでは
少し長めに休憩をしている。

◆大きいザックを友とする
 この日の荷揚げは3人で210L。
昨今の「軽量化」には程遠い量だが
荷物の量だけ幸せは増すと思っている。

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重い荷を背負うには靴もザックも
それなりの強度と造りが必要となり
コースタイムは空身の5割増しを想定し
休憩も増やすがその分だけ風景は深まる。

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◆森の母

 「摘果がはじまっちゅう」

 ヌル谷の源流には
tochikoが母と呼ぶ栃の大木がいる。

 この木は勝負が早いね。

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樹々は広げた枝の範囲で
地中に根を張ると言われていて
この一本でこの地形を護っている。

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◆山の懐
 このブナ林は30年前まで
笹床に山道が続いていたが
住処を追われた鹿により
大木以外の植物が失われた。

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大地が草を失うと土壌が流れ
高木が倒れた箇所の次世代が育たず
自然保護を称する団体がネット張ったり
橅の植林などしているが手遅れだと思う。

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それはこの森が狼を失った時から
長い年月かけて変わってきたもので
人間程度の短い寿命で考えたことで
元の姿に還せると私はとても思えない。

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◆フスベの道
 三嶺への登山道を離れ
カヤハゲの山腹につづく
古の杣人道に分け入った。

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この道はフスベ(炭焼き)の道で
水が豊かな南に向いた森にあり
掘立小屋を建て長くこの森に居座り
炭を焼いていたと物部の杣に聞いた。

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ザレた斜面を横切りながら
山道はこの渓のまほらに下りた。

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                     頂きに神を祀りて山滴る  高橋悦男