「雨が止んだ」
標高920m登り口は気温18℃。
この時期としては涼しいほうで
低気圧が抜ければ温かくなるだろう。
◆分け入る
登り始めは杉の人工林。
ここは林道近くにあるため
比較的手入れがされていて
林床に中低木が根を張っている。
野生と共存するためには
この様な人工林が必要で
野生領域と人の暮らしとの
緩衝地帯となってきた。
◆川を遡る
山道は佐賀山谷川を溯り
頂上部直下の源流に至る。
今回は大雨だったせいか
渓水の音がよく聞こえていた。
中低木の花も夏本番に移ろう。
低木の残花に纏う雨粒が光る。
この様な調和が取れた植生は
間伐など手入れにより保たれる。
私は「マイ箸」や「再生紙」などが
人工林を荒廃させたと思っている。
「今日もおるねぇ」
◆自然に入る
山道は自然の森に入る。
ここから上は古から修験場として
里人が寄せた厚い信仰で守られた域。
山道には歩幅に合う
石積が敷かれて登りやすい。
「渓風が涼しいね」
複雑な地形を流れ落ちる水の
飛沫も森の命たちを養っている。
◆滝へ下る
程なく山道は
ゴウゴウと音を立てて落ちる
深山の滝の元に下りはじめる。
「今日は飛沫くね」
蛇に化身した娘が棲むと言われる
龍王の滝を祀る祠に下る。
頂上付近より湧きだした水が
巨大な岩を削り落差20mを下る
日本の滝百選になった龍王の滝。
山は梅雨に蓄えた雨水を
山里に流し続けてきた。
飛沫も気持ちいいよなぁ。
滝落ちて群青世界とどろけり 水原秋櫻子
