猿板

遊山黒子衆SARUの記録

忘れられた道の遊山 谷を溯る

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 姿の見えない鳥の囀りが響き
緑色のシャワーが降り注ぐ林道は
その終点に近づいてきた。

◆森を見る
 白髪山とカヤハゲを分ける
長笹谷が削り落とした渓は深く
対岸にカヤハゲの森が迫る。

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 芽吹きは稜線に達した。

「まだ高木は何ともないけどね」

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◆過去を見る
 南北の山が迫り日が陰る。
今日歩く古の峠道「韮生越」は
かつて物部と祖谷郷を結んだ
塩の道でもあったと杣に聞いた。

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20年程前まで三嶺への道は
この峠道を使うことが多く
距離が短いこともあるが
冬期雪崩の危険も低かった。

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 今日は谷へは下らず
林道終点を目指し分け入った。

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◆道を見る
 大脳辺縁系の一部「海馬」は
記憶や空間学習能力に関わる脳の器官で
かつて人類が世界中に広がったのも
海馬の発達に関係あるとの説がある。

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また海馬はアルツハイマー病における
最初の病変部位としても知られているから
私は海馬を刺激しないと認知症が進むと考え
山歩きはGPSなどに頼らない様している。

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 これは杣も使った岩屋だ。

山で海馬を刺激し歩く事は道迷い遭難を防ぐ。
でも今ナビは発達し自動運転にまで向かっている。

 この先人間はどうなって行くのだろうか。

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◆樹を見る
 長笹谷の支流に沿った山道に入る。
両脇が切れ落ちた尾根道は気圧差で
谷から風が強くが吹き上がるため
風に強い樅などが根を張り大地を守る。

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 かつて伏流する山水が湧き出す
栃の根元で休憩し汗を拭っていた。
そんな特徴ある木や大岩などは
降雪期の確かな道標となってくれた。

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 「ここも一面笹があったがで」

人に追われた鹿が生きるため笹を失った
山道は流れ出した土砂に埋まって解らない。

 地形と樹を頼りに行くしかないね。

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                 樹々そよぐ颯々の夏いさぎよし  森澄雄