山桜はまだ早かった。
山地に自生するバラ科の高木。
葉は卵形で若葉は赤褐色。
4月頃新葉とともに白花を開く。
◆山桜
三辻山の自然林は
北斜面にあり気温は低い。
ここの花見は4月中頃かな。
◆極相林
この森はアカガシとブナ
暖温帯と冷温帯樹木の混生林で
冬も葉を茂らす樹々があるため
大地の陽当たりもそれなりに少ない。
またそれ以降樹種の構成が
さほど変化しない極相に達して
樹々の植生は少なく単調になるから
「多様性」を言うなら間伐した方がよい。
自然をじ~と見てきた日本人は
これを理解して里山を造ってきたと思う。
「深山樒が咲き出すね」
◆もう一つの森
「何度来ても
気持ちいい道やね」
落葉により土壌が厚く
今年も苔が新緑を見せていた。
森の中のもう一つの森に入ると
姿の見えない鳥の囀りに囲まれた。
「聞き慣れん声やね」
冬を避けて山を下りたものが帰り
鳥達はこれから繁殖期に入る。
渓底もそうだったが
この窪地のように囀りが反響する
地形に鳥は集まる様にも感じる。
◆帰り道
「さあ帰ってお蕎麦や」
節は仲春で春なかば
昼と夜の長さが等しくなり
寒さもすっかりやわらぐ。
山道は日当たりのよい
三辻山南斜面にある
峠道に入り景色が変わる。
「スミレみっけ!」
今日はまだ早いから
樫山峠のスミレは次やな。
ここは森も若く植生も豊かで
中低木の芽吹きが始まっていた。
「バイケイソウも出ちゅうで」
なぜここだけポツンとあるのか。
これもきっと渡る鳥が運んだのだろうな。
「躑躅はまだ早いろう」
ぼつぼつ
登山者も帰って来ゆうね。
頂きます。
鳥帰る無辺の光追ひながら 佐藤鬼房