猿板

遊山黒子衆SARUの記録

仲春の丸山の遊山 出流

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 山道は杉の植林から始まり
登山口から急な葛籠折れとなり
何カ所か崩れて危険な箇所もあった。

◆谷を溯る
 山道は笹ヶ峰より湧き出る
水量豊かな鴨川支流吉居川に沿い
鋭角に削り込まれた深い渓谷は
大雨による崩壊を繰り返してきた。

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 山道は急登を終え
雑木に囲まれた河原に下る。
かつてお父さんとの荷揚げの時は
ここで休憩し渓水で汗を拭いていた。

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◆道直し
 長い冬を越し雪が解ける春
山小屋仕事は道直しから始まった。
冬でも雨が降る四国の高山は
雪が重くなり道が傷みやすかった。

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このロープを張ったところも
谷に向けて崩壊した道の迂回で
長く人に踏まれいい道になってきた。

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 「ここから旧の道で」

そんな思い出の山道は
何本かの支流を渡り宿にあがる。

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◆山懐に入る
 大きな杉が立ち並ぶ「宿」に入る。
吉居川の源流点は丸山の南斜面にあり
その湧き水が山の窪地に土砂を運び
長い年月をかけてこの平坦地を造った。

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杉は元々谷沿いに生える水を好む樹木で
日本三大杉美林も水が豊かな風土にあり
水が伏流する宿の杉も立派に育っている。

 一本立てようや。

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大水の後何度か架け替えた橋も
まだ私達が架けたまま残っていた。

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◆自然の森
 標高約1350mの宿を過ぎると
植生は亜寒帯に入りブナの森に入る。
この木々の殆どは鳥や獣が運んだもので
歩けない植物は他者に頼り生息域を広げる。

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人工林を自然破壊と言う方がいるが
私は杉檜は日本人と共に生きてきたもので
鳥が運ぶと人が植えると違いはないと思っている。

 「霜柱が綺麗~」

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 「大きな木ですね!」

芽吹く前のブナ林は空が開け
大地に陽が届き心も明るくなる。

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 この木がここらで一番大きなブナ。

天を掴むように枝を延び延びを広げる老木。
この姿もこの時期ならではの一期一会だろう。

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                 顔ふつて水のうまさの山清水  河野南畦