猿板

遊山黒子衆SARUの記録

春寒の三辻山遊山 結

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 風も穏やかになった
三辻山の山頂を下って
山麓のブナ林を歩きはじめた。

◆雪を見る
 この日とりあえずアイゼンは持って
ソールが固くない夏靴で登って来たが
雪をよく噛んでその必要がなかったのは
靴を作った職人の魂もあると感じていた。

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◆森を見る
 四方を海に囲まれた日本は
雨や雪もその日の気温や湿度によって
同じものが降るわけではないから
それに合った装備を調える必要がある。

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でもそれを文書や店員が伝えることは困難で
やはり自分が考えたことを持ち込むことなく
無心に自然に分け入り通い続けるしかない。
そうすれば自然のシグナルが見えてくると思う。

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◆森の中の森
 もうすぐ「もう一つの森」
ある程度の規模を持つ森には
特別な場所があるように思う。

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三辻山の谷が始まるこのナロも
気のせいと言われるだろうが
私は言葉で表すことが出来ない
何か力のようなものを感じている。

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 「この前コゲラ
    突きよった木が倒れちゅうで」

 白蟻もどっか移ったろうかね。

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◆帰り道

 「お腹もへったし帰ろうや」

 例えば木々の紅葉や花の開花が一斉に起こる
鳥や魚の群が一糸乱れぬ集団行動が出来ること
人間の科学では重力が何なのかも解っていない。

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自然の命は全て人間の五感では解らない
何かで絡合して(絡み合い)調和を保つ。
それを四季がある自然をじ~っと見てきた
私達の祖先は感覚で捉えていたように思う。

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そして生と死は繋がっていて
個々は死んでも命は繋がっている
日本人はじ~と自然を見ていて
それに気づいたのだろう。

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  「そうやろう
     一晩中降ったきねえ」

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 お陰でいい雪踏めたで。

 頂きます。

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             さびしさと春の寒さとあるばかり  上村占魚