お父さんと架けた橋を渡る。
あれから何年経ったのか忘れたが
今も使われている事が嬉しかった。
◆変わらぬこと
標高約1,200mの宿から
ブナなど亜寒帯の森になり
気温も変わり雪質も変わっていた。
「この朽ち木にナメコが
いっぱい生えよったがで」
ブナやハリギリの大木たちは
昔と変わらぬ姿で迎えてくれた。
◆森のこと
秋の丸山荘の仕事は薪づくり。
秋は樹々が最も乾いている季節で
営林署の許可を得た倒木などを割って
一年の暖房や調理に使う薪を賄っていた。
「大きな木ですね」
これはブナで樹形も綺麗やろう。
薪取りは毎年場所を変えていて
適度に手を入れたら森は元気になる。
人の営みも自然と共生できる。
そんな小屋仕事が出来た体験は
私の自然観を大きく変えた。
◆帰ること
なだらかなブナ林を抜け
丸山荘へ上がる最後の直線に入る。
いつもここに来れば
薪を焚く香りがしていた。
山小屋を守る樅を潜り
懐かしい丸山荘に上がる。
お父さん
ただいま帰ったよ。
早春の見えぬもの降る雑木山 山田みづえ