登り始めは杉林。
上の登り口までの雪が多く
上がれない時はお父さんと
ここから荷を負い上げていた。
◆溯る道
沢に添った山道は
大雨で流されることもあり
当時道直しは山小屋だけの仕事で
公に手伝ってもらった記憶はない。
◆繫ぐこと
「あれが又兵衛岳」
盗賊の又兵衛が隠れ住んだ
お母さんに聞いた言い伝え。
「休んで行くろう?」
ここの水は地下の水で
美味しいんよと言ってた。
◆お父さんの道
この急な勾配の坂道は
台風で崩落した谷を迂回するため
伊藤朝春お父さんが付けた道。
急斜面を補助するロープは
山頂部にあった電力反射板の
霧氷付着を防ぐために設計者の
山田謙さんが考案したもの。
「確かに急斜面ですね」
このロープは落下防止に
お父さんと2人で張ったもの。
◆山の歴史
再び沢筋に沿って
雑木と植林を交互に登り
大きく育った杉が立ち並ぶ
「宿」と呼ばれる平坦地に至る。
かつてこの山域は
銅精錬のための木炭を生産し
別子銅山まで馬で運ぶための集積地で
最盛期には数十頭の馬がいた。
ここまで来れば
丸山荘のクロが全速力で
迎えに下りてきた。