山茶花の原種が咲いている。
ツバキ科の日本特産種の常緑小高木。
四国・九州・沖縄に自生種があり
椿のように花が落ちず花弁が散る。
◆時を溯る
最深人家の裏に建つ
明治年号が刻まれた石灯籠から
古の信仰の道がはじまる。
◆恵みの山
独立峰である御在所山は
石灰層があるため高い標高で残り
地下水脈により水が多く湧き出す。
豊富な湧き水は里人を養い
水を好む杉も大きく育つ。
その豊かな恵みがゆえに
信仰の対象となったのだろう。
◆集落の跡
沢を渡った橋のうえ
大正15年9月が刻まれた
五山所道への道標に導かれ
御在所山深く分け入る。
道標から間もなく眼下に
見事な集落跡の石積が見えはじめる。
この集落は標高700mを越える峠まで
多くの里人の暮らしがあったと言う。
「この谷で
洗濯なんかしたがやろうね」
◆峠に上がる
樹高20mは越えるであろう
杉並木の急な山道を登ると
空が開き土俵がある峠に上がる。
ここは韮生山祗神社の境内で
対面集落と往来があった峠だった。
一昔前は神祭の折に
この峠に山麓の力自慢が集まり
盛んに奉納相撲が行われ
出店もあり賑やかだったと言う。
「銀杏があったがやね」
一休みして行こうか。
山茶花や雀顔出す花の中 青蘿