猿板

遊山黒子衆SARUの記録

良夜の奥物部遊山 明け時

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 日が暮れて周囲が雲に覆われ
宴を仕舞いテントに潜り込んでから
夜の間雲は切れることはなかった。

◆かわたれどき
 明け方時々テントに
射す光りを感じ目が覚めた。

 tochiko 来たぞ!

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◆変化のとき
 この時期はまだ陽射しが強く
雲は朝陽に吸い込まれてゆく。
 これが昼との気温差を生む。

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南東から吹く風と共に
静かに雲が流れていた。

 「綺麗やねぇ・・・」

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 「雲の虹が出来ちゅうで」

これも夜を越した者への
山神様の褒美なのだろう。

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◆温まるとき
 山の朝はご飯がいい。
日本人はお米で身体が温まり
力が湧いて来るように感じる。

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 昨夜の寄せ鍋をおじやでさらえる。
これも先人が残してくれたものだと思う。

 感謝していただきます。

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 さあ ボチボチと
テント仕舞って降りようかね。

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◆かえり道
 同じ日テント泊が数組いたが
月見に長く表に出たものはいなかった。
それは私が観てもウエアもテントも
この時期にどうかと思う方が多かった。

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数年前爆弾低気圧が近づく中ここに登り
雪に閉ざされ避難小屋で数夜を過ごした
若者の救助に携わった方に聞いた話で
遭難の原因は「経験不足」だと思った。

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いくら山へのアクセスが良くなっても
相手は人の都合は関係ないワイルドな自然。
私達は毛を失った猿だから道具なしでは
一晩たりとも越すことは出来ないだろう。

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昨年10月に発生した富士山での滑落死亡も
昨今流行のSNSの発信を目的とした遭難と思われ
それを戒めてきた街の道具屋が量販店に駆逐されるなか
私はこの先の登山界が心配でならない。

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 さあ次もおっかなびっくり
ドキドキしながらどこに行こうかねえ。

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 生涯にかゝる良夜の幾度か  福田蓼汀