栃は谷筋が好きな樹。
山地に自生するトチノキ科の落葉高木。
5月頃枝頂に白色に紅のかかった花を多数つける。
種子は光沢ある褐色で栃餅や栃粥などを作る。
◆通う道
森の賢者を過ぎ森深く分け入る。
この森も人間の活動により鹿が集まり
下草を失い土壌が流れてしまったが
私はそれも自然現象だと思っている。
◆分かれ道
土壌を失えば今の森は失われるが
この森だって地球の長い時のなかで
氷河時代の一過性の風景であり
これ以上人が関わっても意味はない。
山頂に行く道を離れ
カヤハゲ山麓を横断する道に入る。
ここから先は忘れられた杣道で
これも先人が関わってきた証。
◆杣の寝床
「ケヤキザコ」と呼ばれる
森の平坦地に山道は辿り着く。
ザコ(谷・迫)とは
山と山との間で谷のせばまった所のこと。
この南斜面の平坦地は水が湧き出し
杣人が泊まりがけで炭を焼いたり
山葵などを育てるには良かったろう。
そんな先人が見出した居場所は
私たちにとって森のまほらとなった。
さあ昼をこさえようかね。
◆継ぐこと
私はツアーガイドではないので
野宿を教えることからはじまり
最も大切な暖取ったり煮炊きする
焚火を熾すことを覚えてもらう。
そしてこの経験が有ると無いとでは
生還の確率が変わると思っている。
流木をねぎらふ焚火はじめけり 中原道夫