「この大きな樹が桜ですかぁ」
競争に弱い桜が多い処は木が少なかったためで
ここは戦後の木材供給のため一帯を刈られだが
森は100年足らずでここまで回復した。
◆森のこと
複雑な地形を持つ日本の山地は
その場に合った多様な木々が根を張り
そのうち特徴的な樹を覚えておけば
積雪時の有効な道標になる。
◆大きな樹のこと
ヌル谷の始まりには
樹齢300年とも言われる
栃の巨木が根を張っている。
tochikoが森の母という老木は
天に向かって青葉を広げ
大きな木陰を落としていた。
植物はどこかで見て記憶していると考えられ
そうだとしたら30年通い続けるtochikoを
この木はきっと認識しているだろう。
「この湧き水美味しいがで」
◆冬道のこと
森の賢者からしばらく歩き
山腹の道が尾根に交わるところで
山道を離れ尾根を追って登り始めた。
山腹を横切る山道は雪が降ると
尾根を巻く風により雪が吹き溜まり
上部から雪崩が発生する恐れがある。
だからその様な箇所を見定め
比較的安全な尾根道に回避する。
◆山を見ること
かつてカヤハゲの尾根は
一面笹に覆われていたが
鹿の集中によりそれを失い
容易に上がれるようになった。
しかし下草が止めていた雪もあり
危険性は高まった様に感じている。
その様に常に変わる山を毎年見て
雪に埋まる足下を見ておくことも大切だ。
目の前に西熊山が現れる。
一度歩いた尾根は他から見ても
それと解るようになる。
「次はあそこから
ここを見ないかんねぇ」
大きな木大きな木蔭夏休み 宇多喜代子