山道は龍王の滝を巻き
新緑のトンネルとなった
梶ヶ森の懐深く分け入る。
◆沢を溯る
滝頭に上がれば
山道は佐賀山谷川に沿い
沢の音に包まれる。
◆涼風抜ける
「風が気持ちいいねぇ」
谷は風の通り道となり
樹々が葉を出せば陽射しが
強いほど森は涼しくなる。
また谷の飛沫も
暑さを鎮めてくれる。
いい季節になったなぁ。
◆目覚めの森
人の一生で
自然に親しむということほど
有益なことはありません。
人間はもともと自然の一員なのですから
自然にとけこんでこそ
はじめて生きているよろこびを
感ずることができるのだと思います。
自然に親しむためには
まずおのれを捨てて自然のなかに
飛び込んでいくことです。
そしてわたしたちの目に映じ耳に聞こえ
はだに感ずるものをすなおに観察し
そこから多くのものを学びとることです。
= 牧野富太郎 =
◆核心へ
渓の奥に入るほど
樹々は大きくなり
渓はせばまり
葉の色は深くなる。
やがて信仰の山梶ヶ森の
仏を祀る奥の院が現れる。
樹も草もしづかにて梅雨はじまりぬ 日野草城