龍王の滝を巻く
山道を歩き滝頭に上がる。
ここから森は自然林となる。
◆滝頭に上がる
眼下に滝頭の釜が見え
しばらく山道は
沢の音に包まれる。
◆日向ぼこ =nurimono=
姿は見えないけれど
あまりにたくさんの
小鳥たちがやってきて
春の唄を歌いはじめる
風の色が変わった
天上で鳥たちが囀ると
春は足もとからはじまる
光がはなたれ
形があらわれ
時がはじまる
すがたの見えない
鳥たちはこの香りをきいて
唄いはじめた
香りとともに
森の中で会話がはじまる
形が違っていても
たましいは
触れあうことができる
◆山の参道
病に苦しむ人に石を投じる者が現れ
またその者に石を投じる者が現れる。
唯一の大脳支配動物である人間の
弱さが露呈したようにも感じる。
そんな未完成な動物の精神は
それほど強いものなのだろうか?
私は今こそ必要なものは
この様な安らぐ時ではないかと思う。
木々の香にむかひて歩む五月来ぬ 水原秋櫻子