今回登る三ツ辻山は
隣の工石山の影に隠れて
目立たない静かな山で
訪れる者も多くはないだろう。
◆埋もれること
はっきりした記憶はないが
私が登山を始めた頃この山が好きで
仲間達ともよく登っていたが
それがなぜだかも思い出せない。
◆目覚めること
「芽吹きがはじまったね」
木の芽立ちは木の種類や
寒暖の違いにより遅速がある。
萌黄色・浅緑色・緑色・濃緑色など
さまざまに萌え出る木々の芽は美しい。
木の芽頃の雷や雨を「芽起こし」とも言われる。
◆植林のこと
林道縁にある錆びた道標から
三ツ辻山に到る山道に分け入った。
山道は植林から始まるが
よく踏まれた道で迷う所はない。
この山域は石英が多いのか
どっしり座る巨大な岩が印象的だ。
◆峠に上がること
ほぼ水平な山道は自然林に入り
ツツジやシャクナゲなどの花木が
相当数自生していると思われる。
「春に来ないかんね!」
これらが咲いたら花のトンネルだろう。
ツツジのトンネルを抜けると
景色が開け広く芒に覆われた
かつての樫山峠に飛び出した。
今は通る者もいない峠から
城下に下る山並の彼方に
土佐湾から続く太平洋見える。
静かでいいなぁ。
美しく木の芽の如くつつましく 京極杞陽