高知市最高地点となる
標高1,177m工石山への登りは
昭和の頃廃坑となった赤良木鉱山の
ドロマイト採石場跡へ続く林道にある。
◆杉林のこと
山道は人工林からはじまる。
ドロマイトは鉄鋼やガラスの原料になる
石灰石に似る比較的風傷に強い鉱物で
この山が高く残った要因と思われる。
人が関わったこの林にも自然の営みが共生し
夏に役割を終えた花が枯れた姿を残し
ミツマタの越冬芽はまだ眠っているが
若葉を芽吹かせた気の早いツツジもあった。
◆雑木林のこと
ほどなく山道は雑木林に入る。
ここもかつて人の手が入った様で
樹々は若く互いを守る様に密生している。
その若い林は落葉すれば
日当たりも風通しもよく
早い時期に芽吹く幼木がある。
「流石トサミズキは早い!
スプリング・エフェメラルやね」
◆山眠ること
でも森の殆どは
「いま行ってもなにも無い」
と言われる冬眠最中の「枯山」だが
その静かな佇まいもいい風景だと思う。
山道はヒノキ屏風岩に到り
南に太平洋を望む視野が開ける。
雲の濃淡に明るい帯があり
前線が横たわっていることが解る。
「少し雲海やね」
私たちが来た道は
まだ雲の下にいるようだ。
枯山に鳥突きあたる夢の後 藤田湘子