猿板

遊山黒子衆SARUの記録

最後の土佐マタギの物語2013 山を追う

修行中

 私の足下で甘えた声を出す
やっと一歳となったこの犬は
今日が山追いデビューだった。
 しっかり学ぶんだぞ。


◆見極める
 猪など獣たちが残した
僅かな痕跡も見逃さない
猟師と犬たちの感覚の中には
数日前の風景も見えている様だ。



◆森のこと
 Kさん達の猟場である
安芸市の背後に聳える山々は
温暖多雨の気候に恵まれ
落葉照葉樹林に覆われている。



 「この椎じゃ樫らぁのドングリが
   山の獣を養のおてくれるがよ」


                   
◆暮らしのこと
 そんな椎や樫は良質の炭を生み
人の暮らしも支えてくれた。
 「みんなぁ家を建てたきにゃぁ」
山があるからこの地で生きてゆけた。



今では人の気配が無くなり
この山中に静かに眠る
炭釜跡がそのなごりを留める。
                
 「河童ちゃんこんな深い山奥にも
   人が上がって畑をしよったがぜ」



 この山の中に積まれ
再び山に還ろうとする石積を
私はとても懐かしいものに感じた。


                


  枝炭の骨の音して山あかり  大木あまり