私の足下で甘えた声を出す
やっと一歳となったこの犬は
今日が山追いデビューだった。
しっかり学ぶんだぞ。
◆見極める
猪など獣たちが残した
僅かな痕跡も見逃さない
猟師と犬たちの感覚の中には
数日前の風景も見えている様だ。
◆森のこと
Kさん達の猟場である
安芸市の背後に聳える山々は
温暖多雨の気候に恵まれ
落葉照葉樹林に覆われている。
「この椎じゃ樫らぁのドングリが
山の獣を養のおてくれるがよ」
◆暮らしのこと
そんな椎や樫は良質の炭を生み
人の暮らしも支えてくれた。
「みんなぁ家を建てたきにゃぁ」
山があるからこの地で生きてゆけた。
今では人の気配が無くなり
この山中に静かに眠る
炭釜跡がそのなごりを留める。
「河童ちゃんこんな深い山奥にも
人が上がって畑をしよったがぜ」
この山の中に積まれ
再び山に還ろうとする石積を
私はとても懐かしいものに感じた。
枝炭の骨の音して山あかり 大木あまり