まだ寒いのに「春」なんてと思うが
そこには寒さが頂点に達すれば
あとは温かい春の気配がしてくる
「極まれば兆す」という日本独特の季節感。
◆寒渓
龍王の滝を越え
沢を遡る山道を登る。
落葉した森を流れる風景は
日本人だから美しいと感じるのか。
◆寒枝
冬枯れた自然林を登る。
「栗が落ちちゅう!」
けど実は無いよ。
山の生き物は賢いからね。
降雪と融雪を繰り返し
落葉は微生物の働きで大地に還り
二酸化炭素も大気に帰る。
再生可能とか言うものではない
それが一番大切な循環だろう。
◆寒寺
宿坊跡で一本立てる。
ここは宗教の場であり
山頂へ続く幾つかの山道が
別れる場所でもある。
「ちゃんと食べちゅうで」
和宏さんの置き土産は殻になっていた。
山の生き物は賢いものだ。
「また置いて行っちゃおきね」
そしてここはとても温かい場所。
鳥寄せの口笛かすか枯峠 佐藤鬼房