「私が先に行くき」
tochikoがトップを取り
林道を離れ長笹谷に下る
森に分け入る山道にはいる。
◆沢に下る
沢に下る斜面には
風が吹き上げた雪がたまり
風は雪を氷に変える事もある。
何でもない標高だが
過去何度かこの斜面で
怖い思いをしたことがある。
沢は別物と考えた方がいい。
◆長笹谷
白髪山とカヤハゲの間に
深い谷を刻んだ長笹谷が現れる。
雪が降ると静寂に包まれる。
いま写真を見返していて
音の記憶がないことに気づく。
この水墨画の様な美しさを
私の拙い写真で伝える事は出来ない。
◆ヌル谷のナロ
長笹谷を渡渉し
急峻に切れ落ちた谷を登り返す。
この時雲が切れ始め
森に朝陽が差しはじめた。
私たちを20年止めた
奥物部の森のまほろばに着く。
私たちを待っていたかの様に
木々のシルエットが雪面に描かれる。
南佐織ファンの大学生が名付けた
「さおりヶ原」が定着した山の平坦地。
私には奇跡としか思えないこの場を
先人が名付けた「ヌル谷のナロ」と呼びたい。
冬川や木の葉は黒き岩の間 惟然