酒器を割ってしまって・・
「それは良いことをしましたね」
電話向こうの満面の笑顔が見える様だ。
◆伝統を継ぐもの
陶芸家 小坂明さんとは
ご家族で東京から土佐の須崎市に
移住された頃からのお付き合い。
人間国宝の窯元で学び
武蔵野美術大学で講師を勤め
日本クラフト展の審査員を経て
後進の育成にご尽力された小坂さんの器。
「今は日常の器を焼いているだけから」
そんな基本が整ったさっぱりした器たちが
私達の日常を落ち着いたものにしてくれた。
◆三千年前の技
お気に入りの酒器が
まだいくつか残っていた。
冷たいビールを注いだときの
何とも言えない触感が気持ちいい。
「これは縄文時代「拭き漆」の技法を
誰もやんないから復活させたものなんだ。
当時は土を焼く温度が低かったから
防水のために使ったんだろうね」
◆日本文化への憧れ
「最近中国や台湾の富裕層の注文が多くて
自分の新作が作れないのがストレスだよ」
「この前北京に招待されてね。
中国風の焼き物も送ってたんだけど
この「口紅」を施した器みたいな
日本の焼き物しか見向きもしないんだよなぁ」
私も中国で感じたことですが
中国人は本当は日本が好きなんでしょうね。
「そうじゃなけりゃ
日本で爆買いなんかしないよ」
人もわれもその夜さびしきビールかな 鈴木真砂女