林道を離れ一旦谷へ下る。
ここから先は山道以外
人の手が入っていない自然林。
◆長笹谷
10年位前までは
いつも同じ風景で迎えてくれた
長笹谷は幾度も土石流に吞まれ
沢登りも躊躇する状況になった。
◆分け入る
25年ほど前私たちが
初めてこの森を訪れたとき
目に映る全てが緑に輝いていた。
これぞ原生林と言える風景だった。
「河童ちゃんハルゼミやね」
◆ヌル谷のナロ
この森の平坦地を寝床に
私たちは多くの事を学んだ。
そして森の植生が豊かな頃
バイケイソウは花を咲かせる前に
白い虫たちに食い尽くされていたが
その虫すらいなくなってしまった。
◆奥物部の森
ヌル谷を発ち稜線に向かう
ここは土佐最大のブナの住処。
かつてこの森の大地は
木々と共生する笹に覆われていた。
しかし今では全ての笹を失い
むき出しになった土壌は
雨に洗われ登山道も埋まり
土石流まで起こしている。
そんな森に大木達は
かろうじて根を張っているが
次世代を担う若木の姿はない。
いったいこの森どうなるのか。
一山の春蟬に身を浮かせゆく 鍵和田秞子