旧仁淀村は私の故郷。
ここで暮らした祖父達も
きっと愛でたであろう桜には
やはり特別な思い入れがあります。
◆市川家の桜
まずは土佐藩の番所役を
代々務めた市川家の門を守る桜。
市川家を訪れるものは皆
この花のカーテンを潜ります。
◆大石家の桜
集落の中心にある大石家の桜は
銘木中越家のしだれ桜の子。
先代当主が孫と一緒に植えた
樹齢50年ほどの若いしだれ桜は
その色も鮮やかに輝いて見えます。
◆真打ちは中越家の桜
代々秋葉神社の宮司を務めた中越家当主は
この桜の満開に「桜衣姿」(さくらごろも)を纏い
正座で向かい合ったと言われています。
一本の枝も切ってはならぬ家訓により
ここで200年以上守れてきたしだれ桜は
俳人黒田杏子さんの心を強く打ち
彼女の桜花巡礼はこの桜で満行となりました。
27年日本中の桜を巡った俳人が
この辺境土佐の山間にある老木を
これ以上の桜はないとしたことは有り難く
また誇りに感じています。
身の奥の鈴鳴りいづるさくらかな 黒田杏子