花の百名山に数えられる
四国の名峰法皇山脈「西赤石山」へ
和宏さんと春花を求め訪れました。
◆山の懐へ
かつて銅山として人が関わった
山域にはいくつか登山道があり
私たちは最も古い旧別子山村側から
足谷川に沿って稜線を目指しました。
◆記憶の中へ
江戸時代から世界最大量の銅を産出し
昭和48年に閉鎖まで栄えたこの山には
最盛期には1万人が暮らしたと言われます。
その銅山越を挟んだ山麓には
閉山と共に再び緑に沈もうとする産業遺跡が
当時の賑わいを今に伝えています。
◆霧の中へ
この日は季節外れの寒波と
海から短距離で1,800m近くまで
標高を上げる特異な地形により
稜線は濃い霧に覆われていました。
しかし霧が作る幻想的な水滴と
霧のスクリーンを通した淡い光は
若葉の美しさを際立たせています。
◆花の中へ
銅の精錬に使用する薪の採取や
精錬により発生する亜硫酸ガスのため
森と土を失ったこの山域は
今、自らの力で回復しようとしています。
しかしその人の手により現れた環境は
四国に無かった高山性の植物を呼び
その可憐な花たちは
ここで夢を抱いて散っていった人々に
手向ける花のようにも見えました。
花馬酔木山深ければ紅をさし 福田蓼汀