猿板

遊山黒子衆SARUの記録

再会の遊山 転

看板

◆不安
 いつの頃からか冬眠の荷揚げを手伝うようになり、
その年も一緒に荷揚げを行い、
2月11日撤収の打ち合わせをするために
丸山荘に下山し連絡をくれるはずでしたが、
日が暮れても彼から連絡はありません。
丸山荘に連絡してもまだ下山していないとの事。
私は強い不安を感じ、
深夜tochikoと西条に車を走らせました。

 我々は前日まで石鎚山系にいました。
この年四国は大雪で、
合間に幾度か降った雨による弱層の形成を確認し、
又その日の異常な高温に雪崩の危険性を感じたため、
目標の無名峰登頂を断念し下山したところでした。

 登山口で長い夜を明かし、
夜明けと共に登り始め早朝到着した我々を
当時丸山荘の管理人をしておられた、
伊藤久子さんは笑顔で迎えてくれた。
「気象がおもしろいから、頂上でのんびりしとるんよ」
私もそうであってほしいと強く願いました。

◆凍てつく森へ 
 今の丸山荘には私が声をかける人はいません。
少し先に進んだところにある、
かつてのスキー場で一本することにしました。

標高1,550mの小屋を過ぎれば、
高い標高を示す木「ダケカンバ」が現れ、
自然条件も寒く厳しくなっていきます。

 天候も回復の様子もなく、
強い風が吹き山はガスに包まれていますが、
ガスと風は美しい霧氷を造っていました。

◆還る
 スキー場から500m位登った、
登山道を外れた樹林帯の中に、
Y氏が横たわっていた場所があります。

 線香に火をつけ静かに手を合わせると、
心のどこからか「お帰りなさい。」と、
いつもこの山で迎えてくれた
あの声が聞こえる気がしました。
 皆で森で昼食にしていると、
Y氏も一緒に笑っているように思えました。

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