「蕾のまま冬を越すがで
産毛が守るがやろね」
このミツマタの生命力が
千年残る和紙に宿るのだね。
◆祭りのあと
山道は土俵跡がある
開けた広場に辿り着く。
ここは韮生山祗神社の境内で
対面の集落に下る峠でもあった。
かつてこの山中の峠は
神祭の折山麓の力自慢が集まり
奉納相撲が行われ
笑顔が満ちあふれていた。
◆祈りのかたち
韮生神社の鳥居を潜り
山頂まで続く長い参道がはじまる。
両側に聳えるスギの巨樹の間を
潔いほど真っ直ぐ伸びる
山道は石段が組まれている。
「参道やもね」
修行する山伏が石を積んだのか
信仰を寄せる里人が積んだのか。
八十八ヶ所霊場に納められた石仏が
訪れるものを静か迎えてくれる。
どれ一つとして
同じ表情のない仏様たちは
それぞれいいお顔をしていらっしゃる。
日のひかりひとときとどき仏の座 山口速